どーも、トモトモです!!
本日、取り上げる作品はこちら!!!
『高校生家族』
週刊少年ジャンプで絶賛連載中。作者は『磯部磯部絵物語』の仲間りょう先生です!!
(今ならジャンプラで2巻分が無料公開中!)
家族全員が高校一年生になる、というトンデモストーリーな青春ギャグ漫画。
父母はもちろん、妹とペットのゴメス(猫)まで同じクラスになります。
これだけ聞くと出オチに思えますが、これが笑いアリ感動アリでかなり面白い。
40を過ぎて試合に出て、限界を迎えていく身体と裏腹に心は若返っていく一郎お父さんのお話なんかは、思わず熱くなれる名エピソード
たまに狂気を感じるギャグ回もありますが、そこも魅力です(オススメは31話)
ギャグとしての面白さと青春漫画としての面白さが両立しており、その緩急が楽しい漫画です。
さて、前置きが長くなりましたが、この作品の英訳版……
翻訳家さんの腕前がすごすぎるんです!!!
各話からピックアップしていきます。
英訳でハードボイルドになった春香さん(8)
第三話
初めてのホームルームにて「クラスに家族がいるなんておかしい」との声がクラスで上がります。そこで声を上げたのは高校生家族の長女・家谷春香(8歳)
クラスメイトたちに春香が言い放ったセリフが以下。
家族がダメとかさー…
高校生にもなって下らないこと言わないでよまったく…
一対大勢なんて、普通の高校生ならヘタすりゃトラウマになるシチュエーションですが、
8歳とは思えない風格で周囲を黙らせる春香。
伊達に飛び級を果たした天才ではありません。
しかし、春香の風格は英訳版で倍増しします。
英訳版のスクリプトが以下。
Families are not okay? You’re in high school…
…and you’re still saying stupid stuff like that?
Cut the crap.
はい、注目してほしいのが“Cut the crap”
こちらを辞書で調べると、以下のような意味となりました。
寝言は寝て言え
大勢の高校生相手に「寝言は寝て言え」と言い放つ8歳の少女
かっこよすぎる
教養を伺わせる光太郎
続いて第四話
友だちができず、ひとりランチタイムに興じる光太郎の隣に、父:一郎(※高校一年生)が座ってくる。家庭の事情で高校進学を断念したという一郎。
念願の高校生活を過ごせる喜びを笑顔で語ります。
一郎「最近どんどん父さんは、若くなっている。気がする」
光太郎「(数奇な人生)」
はい、ここ!!!
光太郎が頭に浮かべた「数奇な人生」という言葉。
英語版ではどう訳されているか見ていきます。
Ichiro “Lately, I feel like… I’m rapidly getting younger…and younger.”
Kotaro “Like Benjamin Button”
Benjamin Buttonってなんだ?
調べてみたところ、
Benjamin Buttonとは2008年に公開されたアメリカ映画であることがわかりました。
ここでストーリーを抜粋します。
80代の男性として誕生し、そこから徐々に若返っていく運命のもとに生まれた男ベンジャミン・バトン(ブラッド・ピット)。時間の流れを止められず、誰とも違う数奇な人生を歩まなくてはならない彼は、愛する人との出会いと別れを経験し、人生の喜びや死の悲しみを知りながら、時間を刻んでいくが……。
こちらのサイト より抜粋
はい!!
という感じで「年を重ねるほどに若返っていく」というキーワードから、“Like Benjamin Button”(ベンジャミン・バトンみたいだ)と言ったわけですね。
ちなみにこの映画、和訳に至った際のタイトルがこちら。
ベンジャミン・バトン ―数奇な人生―
というわけで、光太郎が言語版で「(数奇な人生)」と言った段階から、つまり作者の仲間りょう先生はこの映画を意識していたことが伺えます。
つまり、“Like Benjamin Button” というセリフは作者の意図を読み取ったかなり高度な翻訳だといえます。
原語版以上のウィットを産み出したゴメス(猫)
最後に第七話
「校長室に何者かが脱糞をしたので緊急全校集会で犯人捜し」
というかなりぶっとんだ内容
家族総出でゴメスを庇いますが、奮闘むなしく校長室に呼び出されてしまいます。
校長「その猫ちゃんが……一年三組家谷ゴメスくんがやったんでしょう?」
一郎「(万事休す……!!)」
はい、ここ、ここ!!!!!!
まず「万事休す」を普通に訳したらどうなるか見てみましょう。
there is nothing more that can be done; it’s all over.
表現が二つありましたね。では、
Q.実際の英訳版ではこの二つのうちどちらが使われているのでしょうか?
見ていきます!ハイ、ドン!!
Principle “That kitty…no. Gomez Ietani from class 1-3. He’s responsible, isn’t he?”
Ichiro “The cat’s out of the bag !!”
はい、答えが出ました!!!!
正解は、どちらでもない!!!!!!
なぜ、こんな訳になったのか!?
The cat’s out of the bag !! ってなんや!!?
見ていきましょう。ハイドン!!!
秘密が漏洩した
はい、つまり、「(校長に)ばれちまった」って言ってるわけです!!
そして、「ばれた」というニュアンスを意味する表現で、猫(Cat)を使ったものが英語には存在したんです!!!海を越えた先の国の言葉が、作品のシチュエーションと噛み合った奇跡!!!
これは日本語だと表現できません!!!!!
しかも!!ちょっと汚いですが、う〇こが漏れるのと秘密が漏れるという点でも掛かっている。
これは奇跡だ!!!!素晴らしすぎる!!!!!
正直、英訳漫画を読んできた史上、最も興奮した瞬間でした。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回、取り上げた英訳版:高校生家族。
原作の雰囲気を再現しようという、翻訳家さんの熱意が伺えました。
今までも、いろいろな作品の英訳を取り上げてきましたが改めて感じたことがあります。
機械技術による翻訳は今後も技術が進んでいくでしょう。
しかし、人間の手による翻訳という仕事はいつまでも残っていてほしい。
High School Family Kokosei Kazoku の翻訳を担当されたのは、Amanda Haleyさんというそうです。Amandaさん。仕事とはいえ、原作愛が感じられる翻訳をありがとうございました。
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